ストラスブールのルーヴル・ノートルダム博物館の隣にはロアン宮殿があります。
1732年から42年にかけて建てられ、司教館として使われました。1785年の 詐欺事件、王妃の首飾り事件で罪に問われたロアン枢機卿も住んでいた館です。
2階建てで、現在地階は考古学博物館、1階が装飾美術館、 2階が「ストラスブール美術館」となっています。
この美術館のオールド・マスターのコレクションは素晴らしい。
特にイタリア美術はジョットからクリヴェッリ、ボッティチェッリ、 フィリッピーノ・リッピ、チーマ・ダ・コネリアーノ、ピエロ・ディ・コジモ、 ソドマ、ロット、パルマ・イル・ヴェッキオ、ラファエロ、フランチャビージョ、 ガロファロ、コッレッジョ、ティントレット、ヴェロネーゼ、グエルチーノ、 ジョルダーノ、リッチ、ティエポロ親子等が揃う豪華さ。
中でもラファエロの「若い女性の肖像」はローマのバルベリーニ美術館にある 「フォルナリーナ」と比肩する名画。
着服と半裸の違いはありますが、右手を胸に当て右3/4を向いて顔はこちら向きの ポーズも、真珠の飾りの付いたターバンをしているのも同じです。
ソドマの「聖家族」で洗礼者ヨハネを天使が抱き支えているのは珍しい。
フィリッピーノ・リッピの天使の上半身図は大きな画面の一部を切り取った もののようですが、天使の上目づかいの眼差しが印象的で心に残ります。
フランチャビージョの「寺院での演説」では登場人物達の5倍はある 寺院の建物を強調した構図が珍しい。
サルヴァトール・ローザの自画像は彼らしく黒主体で鋭角的印象の中に、 幼少時に父母と離れて厳しい人生を歩んだ画家の孤独と悲哀が滲んでいるようです。
ニコラ・ド・ラルジリエールの「美しきストラスブールの貴婦人」は 彼の傑作の一つで、当美術館の「モナリザ」と言われているとかで、 暖かい色調と神秘的な筆遣い、凝った衣装、特に謎めいた大きな帽子は 観る者の心を捉えて離しません。
印象派の嵐が吹き荒れる中で、伝統的なアカデミーの画家として、 パリのサロンを中心に活躍したジャン=ジャック・エンネルの「赤い服の女」も 彼の傑作肖像画と言えるでしょう。
この他にもエル・グレコ、リベーラ、スルバラン、ゴヤ等のスペイン絵画、 メムリンク、ルーベンス、ヨルダーンス、ダイク等のフランドル勢、 ラファエル前派のロセッティの作品等もあり、超一級の美術館です。