美術館訪問記-166 奇跡の聖母マリア聖堂

(* 長野一隆氏メールより。写真画像クリックで原寸表示されます。)

添付1:奇跡の聖母マリア聖堂正面

添付2:ベルナルディーノ・ルイーニ作
「マリアの結婚」

添付3:ベルナルディーノ・ルイーニ作
「東方三博士の礼拝」

添付4:ベルナルディーノ・ルイーニ作
「東方三博士の礼拝」拡大図

添付5:ベルナルディーノ・ルイーニ作
「神殿での議論」

添付6:ガウデンツィオ・フェッラーリ作
「奏楽の天使」

添付7:ガウデンツィオ・フェッラーリ作
「奏楽の天使」拡大図

添付8:ガウデンツィオ・フェッラーリ作
「奏楽の天使」拡大図

ミラノから20kmほど北北西に行った所にサロンノの町があります。

ここにある聖堂にベルナルディーノ・ルイーニの傑作があるので、紹介しておきましょう。

その聖堂は、街中にある、ルネサンス期の堂々たる建築で、1498年完成。

ファサードは、ジョヴァンニ・アンソニー・アマデオの設計で、 2本が対になった円柱を4組2層に使用しているのが、いかにもスマート。

聖堂の名前は「奇跡の聖母マリア聖堂」

聖堂建設前には、この場所に小さな礼拝堂があり、そこに置かれていたマリア像に 祈念した病の男が奇跡的に回復した、という事からこの聖堂が建てられました。

聖堂内部は装飾に満ちています。

壁や柱にはベルナルディーノ・ルイーニ作のマリアとキリストの物語が描かれていますが、 これがルイーニのローマ旅行後の仕事で、ラファエロの影響が顕著です。

穏やかで調和に満ち、色彩も豊か。それにレオナルド譲りの優美さと気品が加わり、 まさにルイーニの最高傑作と言えるでしょう。

身廊の天井は5つに区切られ、それぞれに中心に向かって 5体の天使の彫刻が配され、中心部分にはフレスコ画があります。

横の礼拝堂がある場所には、2箇所、 「最後の晩餐」と「キリストの埋葬」の着色木彫群像が置かれています。

余りの被写体の多さに、夢中になって写真を撮っていると、 堂守らしい老人が電気を点けてくれ、手招きして後について来いと言います。

何と2階への扉を開け、階段を登って隅々を案内してくれ、 天井の全てに点灯してくれました。こんな親切を受けたのは初めてです。

2階からは天蓋が間近に見えますが、ここにはガウデンツィオ・フェッラーリ によるコーラスや楽奏をする天使達の見事な群像が描かれています

これは1525年に主要壁画を完了したルイーニが、ルガーノの サンタ・マリア・デッリ・アンジョリ教会などの仕事を終えた後、 この聖堂で追加の仕事を受け遂行中に急死したため、 ルイーニの工房で働いた事のあるフェッラーリが後を継いだのです。

ガウデンツィオ・フェッラーリ(1475/80-1546)は、ミラノ近郊の生まれで、 地元で絵画修業の後、ミラノに出て、 レオナルドや弟子のルイーニ等の影響を受けています。

この天蓋の大作は、1534年に引き受けてから1545年までかけており、 完成後力尽きたように、翌年早々亡くなっています。

楽器を奏で歌いながら天空に舞う多数の天使達をはじめ、至高の神を取り巻く キューピッド達の姿は、一人として同じものはなく、優美で色鮮やか。 観ていて飽きません。

天蓋の周囲に配置された木彫のデザインもフェッラーリが全て手掛けており、 それだけでも1年以上かかっています。

実際の彫刻はアンドレア・ダ・ミラーノが担当しています。

ベルナルディーノ・ルイーニとガウデンツィオ・フェッラーリの作品は、 イタリア各地だけでなく、世界の主要美術館でもよくみかけます。

美術館訪問記 No.167 はこちら

戻る